学校の怪談「学校の先生たちが消えた夏」

この記事は3分で読めます。

※ネタバレになりますけど、怖くないです
これは私が祖父から聞いた話です。

目次

夏、担任の先生が突如消える

あれはセミの鳴く暑い夏。

2組のクラスの生徒が「先生が帰ってこない」と授業中にやってきた。

隣の教室に行ってみると、黒板には『自習』とだけ書かれており、生徒が言うには「自習してて」とだけ言い残してかれこれ2時間近くも帰ってこないそうだ。

自分は3組の授業の途中なのでどうするか悩んでいると4組の先生が「どうしました?」と廊下に顔を出していた。事情を説明すると4組の先生は黒板に自習とだけ書き、2組の先生を探しに行ってくれた。

その日はとても暑い日だったので、どこかで熱中症で倒れているのではないかと心によぎったが、4組の先生が駆け足で探しに行ったのを見届け自分は授業に戻った。

チャイムが鳴り、休み時間を挟み次の授業が始まった。

授業を始めて5分ほどしたとき、4組の生徒が「先生が帰ってこない」と私に言ってきた。

ここにきて私は異変に気が付く。そういえば先ほどから他の先生を見ていない。

1組に足を運ぶとそこにも『自習』とだけ書かれ、談笑している生徒たちの姿が目に入った。

「これは、何かが起こっている」そう思い、私はクラスの黒板に『しばし自習』とだけ書き残し、教務室に向かった。

誰もいない、からっぽの教務室

教務室に入ると首振り扇風機が書類を巻き上げ、床にバラまいているところだった。

学年主任も教頭もいないので、これはいよいよ大事だと思い校舎中を探すことにした。

駆け足で校舎を回っていると、音楽室から人の声のようなものが聞こえてくる。

恐る恐る音楽室の扉に手をかけ、中を覗いてみると・・・

「打ったー------!!!!」

ラジオから流れる声に合わせて「「おお!!!!」」と歓声が上がった。

見れば音楽室の中に2組の先生も4組の先生も教頭も学年主任もいる。

そればかりかほかの学年の先生も校長までいる。

みな1台のラジオを囲って聞き耳を立てている。

そう、その年は長岡高校が甲子園2回戦に進出した年だった。

気が付けば自分もその輪に加わりラジオに聞き耳を立てている。

「打ったー----!!!!」

実況の声に一喜一憂する先生たち。

そう、学校中の先生たちは甲子園の放送を聞きに音楽室に集まっていたのだ。

後で聞くところによると最初は校長がラジオで甲子園を聴いていたところを教頭が見つけ、そこに学年主任が加わり、探しに来た先生たちが次から次へと集まりこうなったというのだ。

ほとんど全教師が音楽室に集まり固唾をのんでラジオを取り囲んでいる。

哀れ生徒たち、自習を命じられ捨て置かれている。

音楽室の窓の向こうの空は青々と広がり、セミはけたたましく鳴くが教師たちは一瞥もせずラジオを向かう。

教頭が新しい煙草に火を付ける姿を見て私は「しまった」と思う。

黒板に書いた『しばし自習』の『しばし』は余計であったことを。

終わり

最近まじめな話ばかりだったので今回はちょっと違う話をしてみました。
いかがでしたでしょうか。

私は当時祖父からこの話を聞いたとき「なんて牧歌的なんだ」と驚いたことをよく覚えています。

生徒をほったらかしにするのは褒められたものではありませんが、学校の先生が授業をさぼることができるほど大らかな時代に少し憧れてしまう気持ちもあります。

現代でこのようなことが起きれば生徒がSNSで拡散し、炎上。学校の電話は鳴りやまず、教育委員会が謝罪、校長は減給、その他職員は訓告は免れないでしょう。

私が教員家系に生まれて将来塾の先生になりたいと思った理由の1つは「教科書に載っていないことも教えたい」と思ったからです。

祖父が教師となった頃は戦後間もない頃で、軍隊に所属していた人が学校教育を受けなおすために入ってきて、自分より年上の生徒いたりもしたそうです。

生徒の年齢も家庭状況も様々でそこには多様性を自然と許容できるゆとりがありました。

現代はすべてが個人個人に最適化されダイバシティ―&インクルージョンのスローガンのもと、意識的に個人の権利を主張する社会で窮屈さを感じてしまいます。

そんなことを考えていたら「そういえば最近佐藤塾もイベントやってないな」と思いました。

色々な年齢の子どもたちが一緒に遊べる空間を提供し、子どもたちのサードプレイスとしての役割を最近は果たせてないことを思い出しました。

そういうわけで中3の高校受験が終わった後、3月中旬ごろイベントをご案内させていただこうと思います。

商品付きボードゲーム大会やタコパ、クレープ焼いたり色々企画していますので、近日中にお知らせしたいと思います。小中学生の皆さん、どうぞ奮ってご参加ください。

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