「ゾウと鎖」、「ノミとコップ」

子育て

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皆さんはサーカスを見に行ったことはありますか?
近頃サーカスを目にする機会も大分減ってきましたが、私は1度だけあります。

サーカスに行くと大きなゾウがいますが、そのゾウを繋ぐ鎖は驚くほど細いことに気が付きます。
きっと、ゾウが本気で鎖を千切ろうとすれば、あっけなく鎖は千切れてしまうだろうと思えるほど細い鎖です。

しかし、不思議なことにゾウはその鎖におとなしく繋がれたまま動こうとしません。

なぜでしょう?

サーカスにいておとなしくしていれば、エサがもらえるからでしょうか?

この話は「鎖が細くてもゾウが逃げ出さない理由」として有名な話です。

答えは、子どものころから鎖に繋がれていたため、ゾウは自分の力では鎖は千切れないと思っているからです。
小さいころのゾウは、今より力が弱く、鎖を千切ろうと頑張っても千切れなかった経験があります。
その経験から、ゾウは大きくなった今も、「自分の力ではこの鎖は千切れない」と考えているのです。
すでにその鎖を自分の力で千切ることができるのにです。

似たような話は他にもあります。
「ノミとコップ」の話です。

みなさんノミは知ってますよね?
あのぴょんぴょん飛び跳ねる虫です。

ノミは体長が1~9mmで、その体長の実に150倍もジャンプができるといわれています。これは人間なら、30階建てのビルを飛び越えることになります。

しかし、そんなノミも、しばらくコップを逆さにした物の中にいると変化が訪れます。
しばらくしてコップを外すと・・・
なんと、普段は大ジャンプできるノミが、コップの高さまでしかジャンプできなくなるのです。

これはノミが、何度もジャンプしてコップの天井に頭を打ち付けているうちに、「自分はこれ以上は跳べない」と思ってしまうからなのです。
本当はもっと高く跳べるのに、ノミはコップという障害がなくなった今も高く跳ぶことができません。

私はこの2つの話を聞いてとても恐ろしくなりました。

本来持っている力を、自分自身の思い込みで使えなくなっているのですから。
これを子育てに置き換えると、深刻さがさらに伝わると思います。

「お前はだめだ」
「お前には無理だ」
「身の丈にあった大学にしろ」
「前もだめだったから、今回も無理だ。あきらめろ」

親や教師にこう言われて育った子はどう育つでしょう?
きっと、その言葉の通りになってしまうのではないでしょうか?

本来持っている翼を広げることもなく、自身を低く評価し、きっと、つらい一生を歩むことになるのではないでしょうか?

私は子どもにそんなこと言わない!と思った人に一つ聞きたいのですが、態度でもそのように受け取れる態度を1度も取ったことはありませんか?
言葉以上に表情や仕草は相手に伝わります。

塾業界にいると、こう言われることが数多くあります。
「先生、うちの子は〇〇大学(高校)に受かるでしょうか?」

そう言われた時、私は心の中でこう思います。
(お母さんはどう思われていますか?)

1つだけ真実があります。

親が信じられないことを他人が信じることは無理です。

なぜなら、親が「うちの子は落ちるかもしれない」と思っていると、それが確実に子どもにも伝わっているからです。
そしてそれは、子どもの自己肯定感を著しく下げ、成績に大きく影響を与えるからです。
言葉にしなくても伝わります。

親という存在は、子どもにとってのサイドブレーキのようなものです。
サイドブレーキはなくてはならないものです。危険から身を守ってくれる存在で、必要不可欠な存在です。
しかし、時として誰よりも子どもの成長を止めてしまう存在でもあります。

過去に凄いお父さんがいました。
その子は受験生で誰よりも努力を重ね、死ぬ物狂いで勉強していました。
怠けていた過去を後悔し、必死に勉強する姿には鬼気迫るものがありました。

受かりたい思いも、受かってほしいと思う親の思いも人一倍だったと思います。
そんな中、志望校を決める際の面談で、その子のお父さんはこう言いました。

結果はどうでもいいです。〇〇がここまで頑張っていることが一番です。先生には本当に感謝しています」

この瞬間、私はその子の合格を確信しました。
このお父さんの思いはきっと、その子に伝わってるはずだからです。

お父さんはもう、合格とか不合格とか、そんな次元にいなかったのです。
もう「うちの子が頑張るようになったことが一番」という、結果ではなく、過程を評価している姿勢に私は感動を覚えました。

このお父さんの思いが伝わったその子はもう無敵です。
だって、受かっても、落ちても認めてくれる存在が身近にいるのですから。
怖いものなどありません。全力で目標に向かっていけるのですから。

これに勝る幸せはありません。
私も数多くの受験生とそのご家族と触れ合ってきましたが、このお父さんはいつまでも印象に残っています。
結果はもちろん合格です。正直最後までどうなるかわからないとハラハラしていましたが、その子は見事合格を勝ち取りました。

その背景にあるのは、多くは語らなくても態度で示した父親の姿があったことを私は知っています。
親子で勝ち取った合格がそこにありました。

私はしばし、こう思うことがあります。
受験とは、親子の共同作業なのだと。

勉強する子どもはもちろん、遅刻しないよう毎日送り迎えをして、お弁当を作って図書館に送ったりする親も受験生なのです。
子どもは一人では受験できません。
一緒に苦しみを共感してくれる親がいてこそ頑張れるのです。

かつて高校受験に合格した子のお父さんから喜びの電話をもらったことがあります。
「毎日仕事終わりに迎えにいったりして大変でした。でもだからこそ、この合格がとてもうれしい。私はこの子が生まれた時の次にうれしいと感じました。自分が大学に受かった時の何百倍もうれしかったです」

私はこの言葉を聞いたとき、心底そのお父さんがうらやましくなりました。

そして、皆さんにも同じ経験をしていただけるよう努めていきたいと思います。

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