この記事は3分で読めます。

優秀な人間は語彙が豊富?

知的能力と語彙量の相関関係はすでに数多くの書籍、メディアで語られていますが果たして本当にそうなのでしょうか?
今回は語彙量が知的能力、主に勉強に及ぼす影響について考えていきたいと思います。
少年と絵描き

ある絵描きが少年に尋ねました。
「あの空は何色に見える?」
少年は曇り空を見上げて答えます。
「5~6色に見える。白、灰色、肌色、黒、青、水色・・・」
少年は空を指さしながらぽつぽつと答える。
絵描きは頷きながら口を開いた。
「そうか。しかし、私の眼には30色以上に見える。この違いが判るかい?」
少年は首をかしげながら空をにらんだが、せいぜい7~8色にしか見えなかった。

これは美術を学んだ人間は一般的な人間より認識できる色彩の種類が多いという話です。
例えばイエローという色1つをとってみても「サルファー」「クロム」「シャルトル―ズ」「ジョンブリアン」「メイズ」「サンフラワー」などという種類があることを知っている人間はごくわずかです。ましてやそれを見分けられる人間もわずかでしょう。
当時少年は大学・大学院と6年間も美術を専攻してきた父親が謎のマウントをかけてきたと思いましたが、父親は「知識の量によって世界の見え方が異なる」ことを伝えようとしていたのでした。
アンパンマンのカップと赤ちゃん

ある赤ちゃんが4つのカラフルなカップで遊んでいました。
カップは蓋を外すことができ、外してはつけてを繰り返して遊んでいました。
それを見ていた母親は「同じ色同士でまとめること」を赤ちゃんに提案します。
しかし、赤ちゃんは、赤の蓋と赤のカップを組み合わせず、何度やっても
「赤・緑」「紫・黄色」の組み合わせで蓋とカップをくっつけてしまいます。
少し焦った笑顔で同じ色同士をくっつけるよう母親は提案しますが、赤ちゃんは聞きいれてくれません。
困っている母親を見て、そばにいた父親は笑いながら母親に説明しました。
「これは補色だよ。この子は美しい色の並びがわかるんだ」
そう、「赤・緑」「紫・黄色」は補色の関係にあります。
父親は父親にそのことを教わっていため、赤ちゃんがその色を選んでいる理由がわかりました。
しかし、もし父親がその知識を持っていなかったら、親たちはその赤ちゃんを少し変わった子、と認識していたかもしれません。
これもまた知識によって世界の見え方が異なる例の1つです。
IQの高い人間が論理的で冷静なのは語彙(知識)が関係している?
頭にきて怒ることを「キレる」と言いますが、「(言葉が)切れる」ことと感情的になってしまうことは近い関係性にあるのではないかと私は思います。
例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは自分の要求を相手に訴えるための「言葉」を持ちません。
そのため、「泣く」ことで相手に自分の要求を察してもらおうとします。
その要求方法は子どもが長じて言葉を持つことでなりを潜めます。
IQの高い人間は論理的で冷静、感情的になることはあまりないと言いますが、それは要求を適切に伝えるだけの言葉を多く持っているからとも考えられます。
また自分の置かれた状況を適切に「言葉」で「認識」できることも理由として考えられます。
人間が感情的になる要因に「不安」があります。「不安」は自己の理解が及ばないところに生じます。
逆に理解が及んでいれば、「不安」になりませんし、感情的になることもありません。

例えば、走っていたら手に持っていたアイスクリームが落ちてしまったとします。
「走ったらアイスクリームが落ちてしまう可能性がある」あるいは「落ちても仕方ない(当然だ)」という認識があればその事実を受け入れることは容易でしょう。
しかし、まったく予期できていなかった場合、ショックは大きいです。
経験や知識の多い大人はこの事実に対し「仕方ないね」とあきらめることができますが、経験の少ない子どもはそう簡単に割り切ることはできません。
これは知識の量が感情のコントロールと密接な関係にあることを示唆していると私は考えます。
すぐ切れる人間は語彙量が少ない?

すぐに感情的になったり、最悪の場合手が出てしまう人間は「語彙(言葉)」が少ない可能性があります。
これは「語彙(言葉)」が少ないから感情的になるのか、感情的になる人間は「語彙(言葉)」が少ないのかわかりませんが、この相関関係を疑う余地はないようにも思えます。
もしあなたが特定の話題に対してだけすぐに感情的になってしまうのなら、その分野の「語彙(言葉)」、「知識」が不足している可能性があるのです。
よく知っている事柄であれば落ち着いて話ができますが、良く知らない、あるいはわかった気になっているけど無意識では自身の知識不足を自覚している分野に対しては平静ではいられないのは実はそういった要因があるかもしれないのです。
語彙は世界を写実的に捉えるための色彩

語彙が豊富であれば、先の絵描きの見る空と同じように他者より世界を詳細まで認識できます。
「10聞いて1知る人間」と、「10聞いて10知る人間」、「1聞いて10知る人間」では人生を通して知る量が圧倒的に異なります。
ここで厄介なのは、語彙(知識)の多い人間ほどより効率的に学ぶことができるという点です。つまり、語彙(知識)量が増えれば増えるほど加速度的に語彙(知識)量が増えていくことを指します。
そのため、学び始めは遅々とした歩みになることを自覚しなくてはなりません。
勉強好きな子はより勉強好きに、勉強が得意な子はより得意になるのです。
まずは1つでも良いから得意、好きだと言える何かを持つことが学業成就の近道となります。
手っ取り早く語彙を増やす方法
語彙は一朝一夕で増えるものではありません。
しかし、確実に日々増やす方法があります。
それは『会話』です。
語彙の豊富な人間とより多くの言葉を交わすことが肝要です。
それは友人より親や先生の方が良いでしょう。
より多くのインプットとアウトプットの場を設けることが語彙の醸成には必要です。
新しい言葉を使う際には失敗がつきものです。背伸びして恥ずかしい思いをすることも多いでしょう。私も「巨視」という言葉の意味を勘違いしていたことが最近わかり恥ずかしい思いをしました笑
それでもめげずに背伸びを続けることが大切です。無理に難しい言葉を使う必要はありませんが、より適切に物事を表すことができるよう言葉を増やし続けることは勉強に限らずすべてのことに良い影響を与えます。
附属に通っている子に多いのが、こちらの使っている言葉に敏感で、必ず知らない言葉が出てきたときに意味を聞いてきます。
臆せず大人とコミュニケーションを取れるませた精神年齢が彼らの強みだとも思わされます。
皆さんも周りの大人の使っている言葉に耳を傾け、わからない言葉があったら質問したり、辞書を調べてみると良いかもしれませんね。