なぜ個別指導はコマ数が少ない方が良いのか?

この記事は3分で読めます。

目次

個別指導塾で成績が上がらない理由とは?

よくいただくご相談のパターンとして『今通っている個別指導塾では成績が上がらない』というものがあります。

その理由については数多くの持論を持つ私ですが、今回はそのうちの1つをご紹介したいと思います。

個別指導塾で週4コマも授業をとっているのですが、なかなか成績が上がらないんですよね。

佐藤塾に転塾される方々の半数以上が個別指導塾に通っていており、同じようなお話をいただきます。

なぜたくさんコマ数を増やしても成績が上がらないのでしょうか?

今回のお話を聞いていただければ「なぜコマ数を増やしても個別指導では成績が上がらないのか?」と「正しい個別指導との付き合い方」をご理解いただけると思います。

個別指導はコマ数を増やせば増やすほど効果が薄くなる?

まず大前提としてお伝えしたいのが「個別指導のコマ数を増やしても効用は逓減する」ということです。

効用の逓減とは?

私の好きなビールに例えて説明しますね。

1杯目のビールを飲んだ時、私はそのビールから最大の幸せを受け取りますが、5杯目の幸せは1杯目より少なくなります。10杯目にはもはや苦痛になっているかもしれません。
このように同じものでも数を増やしていくうちに受け取れる恩恵がどんどん減ってしまうことを効用の逓減と言います。

成績が思うように上がらない時、個別指導塾はコマ数を増やすことを提案しますが、私の持論では個別指導は多くて2コマまで。それ以上は効果が薄くなるので避けるべきです。

成績が思うように伸びない場合、その原因がどこにあるのかをよく考える必要があります。

・勉強時間が足りないのか

・学習習慣が身についていないのか

・勉強の仕方が間違っているのか

成績が伸びない理由は1人1人によって違います。
その見極めを行わず授業を受けても期待するような成果は得られません。

生徒の個性・特性と課題を見極めずに指導するのは、病名を特定せずに治療を行うようなものです。

なので学習塾が最初の面談に行うべきは「塾の説明」ではなく「生徒さんの学習状況のヒアリング」なのです。

個別指導で成績が上がらない→個別指導のコマ数を増やす

という一見正しそうな解決策は多くの場合、本来の原因になっているところを見落としてしまい、期待するような成績になれないのです。

「頭痛」で悩んでいる患者さんに「水虫の薬」をどれだけ処方しても意味がないのと同じです。

成績が上がらなければ個別指導のコマ数を増やすというのは、風邪が良くならないから『風邪薬をたくさん飲む』ようなものなのです。(※危険ですので絶対にやめましょう)

本人と保護者様が考える成績不振の原因は「間違っている」・・・かもしれない

治療に大切なのは『本人と家族の病識』

医師である叔父に教わったことがあります。

患者さんの病気だけを見てはいけない。
その人の生活習慣、家族構成まで考えなくては本当の治療はできない。

はい

病気というのは遺伝や突発的なものもあるけど大部分が生活習慣から来る。
薬を処方して「今治っても」、根本的な原因を治さないと再発する可能性が高い。

ええ

患者さんの話をよく聞いて時間をかけて原因を特定することが大事。

時間をかけてですか?

うん。時間をかけて関係性を作ることが大事。
何回も会っているうちにポロっと漏らした言葉が大ヒントになっていることもある。

それに最初は本当のことをなかなか話してくれないし、仮に話してくれても本人が原因だと思って話してくれることが間違っていることもあるからね。と叔父は続けました。

この話を聞いたとき、私は叔父を医師として尊敬しました。
大学病院って忙しいはずなのにそんなことまで考えてやっている医師がいるのか・・・と。

そして、それは教育の分野でも同じだと思いました。

確かに私も子どもたちに勉強を教えているとき、ふとした瞬間にその子の手元を見て「あっ、これだ」と思う時があります。そして本人が考える成績不振の原因は間違っていることが多々あります。

例えば算数・数学のノートの取り方だったり、右手でシャーペンを握って左手に消しゴムを持ち続けていたり、計算の途中式の書き方だったり、国語の文章読解で必要な作業を何もしていないことだったり、1人の子どもでも直すべき点はいくつでも見つかります。

それは目に見えるものの場合もありますが、思考の癖だったり、自己評価の低さなど目に見えないものが成長を止めてしまっている場合もあります。

こういったことは、最初の頃はあまり見えてきません。やはり最初は緊張していたり、猫をかぶっていたりして本当の姿は見えてこないのです。

なので最初は子どもたちとの信頼関係の構築が何より重要です。
関係が出来てきてリラックスした状態になると色々なことが見えてきます。

「この先生は間違えたりしても否定してこないから大丈夫だ」そう思ってもらえるまである程度時間を要します。

中には「自分は頭が悪いから勉強しても成績は上がらない」なんてことを言って殻に閉じこもってしまう子もいます。それを聞くたびに私はとても悲しい気持ちになります。そしてそれが大きな間違いであったということを知ってもらいたいと心から思い、指導に当たっています。

子どもの話をじっくり聞くことの効果

子どもだけでなく大人もそうですが、「重要な話」は最後にします。

最初から「重要な話」を言ってくる人は少数で、大部分の人が最初は当たり障りのない話をして「重要な(話しずらい)話」は最後に持ってきます。

そのため、早合点して話を遮ったり、否定したりするともう話ししてくれなくなります。重要な話は引っ込んでしまいます。

なので、些細な事でも傾聴の姿勢に務め、よく聞くようにしています。

問題の答えを間違えていたとしても、「なぜそう考えたのか」が聞き出せるようできるだけ否定的な言葉は避けます。
中には「勘」や「なんとなく」と答えてくる子もいますが、それは自信の無さからくるポーズであって、仮に拙いものであったとしても、どこかに根拠をもって選んでいるはずなのです。

最初はなかなか自分の考えを教えてくれない子も、時間をかけていくうちに教えてくれるようになります。

原因を特定したら本人に気が付いてもらう?

原因が分かったら本人にも原因に気が付いてもらいます。

ここで重要なのは「本人が自分で気が付くこと」です。

例えば「勉強中音楽を聴いている」とか「そもそも自習しに来ない」などの問題点はすぐに口で言って直してもらいます。しかし、原因が根深いものだったり、本人もどうしようもないものだった場合、言葉で言っても解決されることは稀です。

また急激な変化を要する提案は本人のストレスにもなり、続かないこともしばしばあります。

理想はこちらから誘導し、本人が自らの行動を通して原因と解決策に自分で気が付いてくれることです。あるいは本人も気が付かないほどわずかな変化を積み重ねて自然に軌道修正を行えることです。

問題の一番難しいところは、何が問題なのか理解するところにあります。

問題が分かれば、必ず解決策が存在します。

話は戻りますが、体調不良の原因が風邪なのか、インフルエンザなのか、食べすぎなのか、寝不足なのか、低気圧のせいなのかそれを特定しなくては正しい対処法は見つかりません。

そしてそれが「病気」ではなく「勉強」の場合、明確な特効薬はほとんどの場合、存在しません。

更にその原因が分かったところで、本人がそれを正しく理解しなくては対処療法になってしまい根本的な解決にはならないのです。

なので私は「自分の失敗談」を通して彼ら彼女らに理解してもらうよう努めています。

人のふりみて我がふり直せ。私の失敗談を自身に置き換えてもらい、その解決策を踏襲してもらえればベストです。

幸い失敗談は多種多様、存分にございますのでいかなるパターンにも対応できます。

子どもたちの前だとついカッコつけたくなりますが、自身の失敗を語り、同じ轍を踏ませないようにすることも大人の役割なのではないかと思っています。

なぜ個別指導はコマ数が少ない方が良いのか?

タイトルの内容に戻りますが、個別指導は特効薬として効き目を発揮する場面も多々あります。

しかし、その大部分が対処療法になってしまい、本質的な解決には結びつかないことがあることも事実です。

個別指導は成績不振を打開する数多くある手段の1つ

であることは確かですが、個別指導で成績が上がらない→個別指導のコマ数を増やすでは、本質からかえって遠ざかってしまい、本当の原因に気が付く機会を失ってしまう危険性もあるのです。

弊塾でも個別指導は通常通り行っています。
しかし、原則集団指導。本人の状況によっては2コマまで個別指導とさせていただいております。

そして、目標は個別指導から集団指導へ移行できる状態に持っていくことです。

風邪をひいたときに風邪薬を飲むこともあるでしょうが、常に風邪をひいている状態であるなら風邪薬をたくさん飲むのではなく、風邪をひかない生活習慣、体づくりを目指した方が健全と言えるのではないでしょうか?

友だち追加
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次