『2月の勝者』は実際の塾業界から見てどうなの?

この記事は3分で読めます。

目次

都心の小学生たちの中学受験を描いた話題の漫画!

大学受験をテーマにした漫画は数多くありますけど、中学受験は今までほとんどありませんでした。

コミックの最終ページには参考にした書籍が数多く載せられています。
かなり取材を重ねて漫画化したことで生々しいまでに中学受験の様相が描かれています。
しかし、そんな二月の勝者ですが、実際の塾業界からどこまで本当なのか気になりませんか?
実際に中学受験の現場を見ている私が「二月の勝者」と「実際の教育現場」の違いについて解説していきたいと思います。

中学受験は課金ゲームであるか否か?

中学受験は本当に課金ゲームなのでしょうか?
確かにお金をかけた方が有利なのはわかりますが、結局は本人の努力次第だと思います。
親の経済力で合否が決まるようなことはあってはならないと思いますが、どうでしょう?

中学受験は・・・課金ゲームではありません。
ただ無課金では苦しいことも事実です。
おっしゃる通り本人の頑張りが一番です。
なぜ無課金では厳しいのかについて解説させていただきます。

塾に私立中学校にお金がたくさんかかる中学受験

中学受験をするための学習塾は数多くあります。

学力別にクラス分けをして集団指導を行う学習塾もあれば、1対1で先生がつきっきりで教えてくれる個別指導塾もあります。

二月の勝者では、主人公の黒木先生がいる桜花ゼミナールと最大手塾として描かれるフェニックス(ドラマでは名門塾ルトワック)はともに集団指導塾です。

ちなみに最大手塾フェニックスもモデルは言うまでもなくS○P○Xさんになります。

S○P○Xさんの6年生時の学費はおおよそ130万円相当と言われております。(もちろん、受講するコースなどにより前後します)

個別指導塾についても漫画では描かれていますが、某大手個別指導塾ですと1時間の授業料は15,000円ほどです。

弁護士の相談料の相場が1時間2万円であることを考えると、それに匹敵する授業料ってすごいですよね。

もちろん中学受験をする場合は、小学校6年生から塾に通っても遅いです。遅くとも小学4年生からは学習塾に通い受験に耐えうる学力を身につける必要があります。

また、集団指導塾に通っている子の中には、個別指導塾に並行して通う子や、家庭教師を雇っている子も多く存在します。

そうなると、年間にかかる塾代は150万円では利きません。最大300万円もかかるのが中学受験なのです。

さらにいうなら、中学受験して入りたい中学校のほとんどが私立中学校です。

開成中学校の学費

(1) 入学金
(2) 施設拡充資金
320,000 円
120,000 円
入学手続時に納入
(3) 授業料 (月額)
(4) 施設維持費 (月額)
(5) 実験実習料 (月額)
(6) 父母と先生の会会費 (月額)
(7) 生徒会会費 (月額)
41,000 円
6,000 円
6,000 円
2,800 円
550 円
4月、9月、1月の各学期所定日に預金口座振替で納入(申し出により年納、月納もできます)。

※上記以外に、学級費(学年旅行費・教材費等、2021度第1学年は115,000円)をお預かりします。
※第2学年から毎年、施設拡充資金を年額70,000円申し受けます。
※中学校から高等学校に進学する際に、高等学校入学金の半額を入学金として申し受けます。
※入学後、第1学年に限り1口10万円で1口ないし2口の寄付(任意)をお願いしています。

これは男子御三家と呼ばれる私立中学校の1つ、開成中学校の学費です。
ご覧の通り、年間70万円相当の学費が必要となります。
さらにその他諸々の活動費を加わることを考えると一般的な公立中学校との学費負担の差がよりわかると思います。

こんなにお金がかかるんですか・・・
確かにこれは課金ゲームというか、課金しないとできないゲームですね。

そうなんです。

確かに本人の頑張り次第で合格を勝ち取ることはできなくはないですが、より良い学習塾に通い、百戦錬磨の先生から習い、同じように高みを目指す仲間と一緒に切磋琢磨する環境ははっきりと受験を有利に進めます。
決して塾に通わないからといって受からないわけではないのです、しかし塾に通った方が有利に受験を進められる。そういった意味で「課金ゲーム」は言い得ているかもしれません。

塾の先生は生徒を「顧客」親を「ATM」と思っているの?

黒木先生の発言の中で生徒は「顧客」親は「ATM」というものがありますが、塾の先生も心の中だと子どもたちをそんな目で見ているのですか?

それについてはっきりと否定します。
しかし、塾業界にそういった考えをもつ人間が少なからずいることも事実です。
順を追って丁寧に解説しますので、聞いてください。

「二月の勝者」の元ネタ?

二月の勝者の主人公「黒木先生」は明らかに偽悪者として表現されています。

本当は生徒のことを思っているのに、同僚の前では悪態をついてしまう。

その本心は、誰より「異常なまでに加熱した中学受験」に対して否定的な考え方を他ならぬ黒木先生が持っているからだと私は思っています。

似たような話を聞いたことがある。私は二月の勝者を読んだ時最初に抱いた感想です。

この本は「中学受験をわらう」という塾講師のブログを書籍化したものです。

簡単に内容を説明すると中学受験に躍起になる親と、その思いも知らずに適当に過ごす子どもの関係を傍観者の立場で笑う内容です。

しかし、一見バカにしているように書かれていますが、私は本当はこの先生は生徒のことを何より思い、熱い思いを持って教えていらっしゃるのだと同じ教育に携わるものとして感じました。

余談ですが、黒木先生のセリフ「父親の経済力、母親の狂気」というのは開成中学校の校長先生が実際におっしゃったセリフをほぼそのまま使っていると複数のブログで言われていますが、その真偽はわかりません。

現在そのセリフが確認できるのはとある学習塾のブログだけですので、ソースは不明です。作者の高瀬志帆さんがその開成中学の元校長先生に取材したのかも知れませんし、そのブログを書いている塾長に取材したのかも知れませんが想像の範囲です。

「塾講師に騙されるな!」は結構ひどいこと書いているので、読むときはそれなりに覚悟が必要です。
「黒い講師」=「黒木先生」?
名前がとても似ていますがさすがに安直すぎるのでそれはないと思っています。

二月の勝者のコミックの最後のページには参考書籍が記載されています。

その全てを私は読んでいますが、二月の勝者の内容は「塾講師に騙されるな!」(中学受験をわらう)を参考にしているのではないかという感想を持ちました。

黒い講師の発言にも数多く、お金に関するものがあります。その点でも黒木先生との共通点は多いように思えます。

実際、漫画の展開や登場人物の行動がかなり「塾講師に騙されるな!」と被っている印象を持ちました。

(追記)作者の高瀬志帆さんがこの参考文献については否定されています。
直接ご本人から連絡をいただきました。
実際、中学受験で起こる出来事はどれも似たような展開ですので「塾講師に騙されるな!」と内容が似ていたのは偶然だったようです。

話を戻します。

黒い講師は明らかに親をATM扱いする発言をしていますが、大部分の学習塾の現場ではそのような思想は1ミリもありません。

なぜなら必要以上の教育投資には意味がないことを現場はよく理解しているからです。

佐藤塾では必要のない授業は勧めませんし、個別指導オプションをこちらから外すことを提案することもしばしばあります。企業である以上、収益性を否定することはできませんが、生徒の学力に必要な提案はしても、必要ない提案は一切していないと胸を張って言うことができます。

しかし、日本中にある学習塾のほとんどはフランチャイズです。
フランチャイズは利益を目的としており、時として必要のない過剰な教育投資を強いる側面を持っています。
塾側の言いなりになるのではなく、生徒サイドでも必要な教育投資なのかしっかり考える必要があります。

個別指導じゃないのに個別指導を騙るフラチャイズ(余談)

私が大学生の頃アルバイトをしていた某個別指導塾では中学3年生の夏期講習代は30万円を超えました。
100コマ個別指導!と謳ってはいましたが、その実態は同時に複数人の生徒の自習監督で、個別指導とは名ばかりの丸付け要員でした。
そんな実態がまかり通る学習塾業界のあり方に嫌気が差し、同志を募り塾を立ち上げたというのは創業秘話です。

世間に多いフランチャイズの実態は、決して教育理念に支えられたものではありません。

まだちゃんと講師を雇っているところはまだ良いですが、「指導をしない塾」「AIによる次世代学習」を謳う企業の本心は人材確保の必要がないため、コストカットできることや、拡大が容易であることが挙げられます。
つまりは金儲け主義なのです。学力の低い学生アルバイト講師に白衣を着せ権威付け(ハロー効果)している企業も同様です。

決して生徒、保護者様本位ではないのです。あくまでも目的はお金儲けであり、教育理念は二の次なのです。(※決して営利目的を否定する意図はございませんが)

ある意味、二月の勝者の黒木先生の偽悪者的態度はそう言った存在に気がつかず、親心で高額な塾代を払う善良な親への自身の無力感から来るのかもしれません。

受験は親子の初めての共同作業

私のブログではよく使われる表現ですが、「受験は親子の共同作業」です。

二月の勝者では、しばし冷静さを失った保護者様をバカにするような表現がされています。

受験というプレッシャーを前に、子ども以上に傷つくのは母親です。

ここで父親と言わないのは、父親は案外どうにでもなると思っている節があるからです。楽観的なのか無責任なのか。私も男ですが。

しかし、臍の緒で繋がっていた母親は違います。我が子の行く末を我が子以上に案じ、痛みを共有します。

そんな必死な母親を笑うような表現は好ましくありません。狂おしいほど我が子が大切なのです。

どうか、これから二月の勝者が放送されるにあたって、必死な保護者様に対して誤った認識を持たれることのないようお願い申し上げます。

私自身、若い頃は気がつけませんでした。「なぜこのお母さんは私の説明を理解してくれないのだろう?」「なぜ我が子の至らなさを認めてくれないのだろう?」と不平を心の中で漏らしていました。

しかし、人の親になってやっとその気持ちがわかりました。そしてその気持ちを理解してもらえない孤独も知りました。

佐藤塾では、生徒を批判するような発言を講師がした場合、厳重に指導されます。それがよほどのことであったとしても、指導者として成すべきことができていたか厳重に確認を行なった上で、次回からの講師の改善点、教訓を一緒に探します。

全ての咎は講師にあり、が佐藤塾の合言葉です。

また講師採用にあたっても採用基準は「我が子を任せるに値するか」です。その採用基準によって佐藤塾は恒常的な人手不足に陥っていますが、その基準を変えるつもりは毛頭ございません。(2021年度も既に5名の募集を断っています)

しかし、保護者様にも1つお願い申し上げます。先の述べたように塾の講師は大切な子さんの成功のため、日々試行錯誤、自問自答、自己研鑽を重ねております。

お子さんの成功を支援するという意味では、講師は支援者です。

愛という霧で視界が曇っていたとしても決して我が子の姿を見誤らならいようお願い申し上げます。

子どもは時に嘘をつきます。カンニングもします。

それ自体は褒められることではありません。しかし、頭ごなしに怒りをぶつけても本質的な解決には繋がりません。嘘も含めて許容し。しかし、決して見誤らない姿勢が親には求められるのです。それがその子のためです。

それを踏まえた上で、大いに受験という親子の初の共同作業をお楽しみください。

そして、結果がどうであれ、その結果を受け入れ、努力をした我が子を褒め称えてあげてください。

それがその子の成長に必ず繋がります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次